山形リノベーションまちづくり推進協議会

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第2回山形リノベーションシンポジウム

2016.05.25

第2回山形リノベーションシンポジウム

~私が移住をした理由/リアルローカル山形公開編集会議~

日時:5月21日(土) 13:30 〜 15:00

場所:山形市中央公民館 4階大会議室

パネラー:

・佐藤孝弘山形市長、

・吉里裕也(「東京R不動産」代表ディレクター/SPEAC inc. 共同代表)

・小泉寛明(Lusie代表/神戸R不動産ディレクター)

・馬場正尊(東北芸術工科大学教授/Open A代表/建築家)

・渡辺信生(㈱ベーシック)

・大垣敬寛(㈱山のむこう 代表取締役社長/icho cafe 店主)

 

参考:webマガジン「リアルローカル」  https://reallocal.jp/

「第1回のリノベーションまちづくりのテーマは「空き家再生」でしたが、第2回目となる今回のテーマは「移住」と「地域メディア」、そして裏のテーマとして「山形のまちの再発見」です。これからの時代、重要になると考えていることが「地域メディア」です。

地方都市は自分たちの魅力を発信していくのがあまり上手でないと感じます。今後、山形にもっと人が集まり、この地で生まれ育った人がここで過ごしていくことをねらいとするならば、自分たちの魅力を再認識して、それをメディアで発信し、ちゃんと伝えていくことが重要なのではないかと思います。

そのために地域メディアをつくろうと思い、「山形R不動産」という不動産の地域メディアを立ち上げたのですが、それだけでは足りなくて、もっと「人の魅力」や「風景の魅力」、「ライフスタイルの魅力」など、総合的に魅力を発信できるメディアをつくりたい、そのために今日は、その第一回目の編集企画会議として位置づけたいと考え、今回のテーマを設定するにいたりました。」

これは冒頭に馬場正尊氏より語られた第2回目シンポジウムの目的です。

本会では、キーノートスピーチとして吉里氏、小泉氏、大垣氏、渡辺氏から地域メディアのことや、それぞれの状況についてのプレゼンテーションが行われ、その後、全員で意見交換が行われました。

以下は、意見交換の概要になります。を掲載いたします。

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<パネリスト4名からの基調講演を受けて>

■馬場氏

「佐藤市長、率直にどのように感じられましたでしょうか」

■佐藤市長

「自分の人生をどこで築いていくのかという中で、移住されたお二方(渡辺氏、大垣氏)が山形を選んだということは、やはり何か良い部分があるから選ばれたと思いますので、皆さんが人生を通して示してくれた良い部分を提案の形に変えて、外に示していくことが非常に重要だと思いました。

一方で、皆さんの話にもあったように、公共交通が不便であることや、子育て支援もまだまだのところがありますので、発信と併せて、基本的な条件をより良くしていかなければなりませんし、山形にはいろいろな課題と可能性があると感じます。」

■馬場氏

「ありがとうございました。それでは、ここからは企画会議のように進めていきたいのですが、「リアルローカル」のような地域メディアに、いったいどんな情報こそあって欲しいのか、どんな情報の発信が求められているのかについて、コンテンツのアイデアをいろいろと出していきたいと思うのですが、小泉さん、たとえば神戸のリアルローカルで求められる情報というものはどのようなものでしょうか。」

■小泉氏

「よく言われるのが小学校の情報です。神戸の場合、特徴的な学校が2つあって、1つはハーフの子たちが一割くらい通っている学校なのですが、そのような環境で子育てをしたいという声があったり、もう1つは山の上にある公立小学校なのですが、「山の学校」という感じの少し変わったカリキュラムを展開しています。そのような、子育てに関する情報は求められます。そのほか、食べ物の情報も人気があって、神戸も山形のように産地と比較的近い距離にあるので、農家と知り合いになって野菜が買えるという情報が、奥様方からたいへん参考になったという声がありました。移住を決めるにあたっては、女性がボタンを押すといいますか、100%に近いくらい奥さんが決断をしていますね。」

■佐藤市長

「私も観光ガイドなどに定番として出るような情報は何か違うなと感じまして、地元の人が生活の中で楽しんでいることの情報が入ってこないことにギャップがあります。山形では知り合いに山菜をいただく機会があったりするわけですが、それを天ぷらにするだけで、本当に美味しく、これは東京だとなかなかできないことです。また、さくらんぼの時期になると短期集中で急に求人が増えるようなことなどは、住むと普通に出てくる話ですが、なかなか表には出てこない情報ですし、生活実感とメディアに出る情報に非常に差を感じます。」

■馬場氏

「まさにリアルローカルの名前の由来かも知れないですね。リアルな日常のなかのディテイルがしっかり描かれている方が、よりぐっとくるのですね。」

■渡辺氏

「私はUターン者なので、Uターンという視点から言いますと、特に山形のことを調べませんでした。元々住んでいたまちですので、こういう感じだろうというイメージがありました。一方で、たとえば私がIターンをする場合として山形を見たらどうだろうと考えてみますと、ちょっと山形はIターンをするには難しいかなと感じてしまうと思います。

なぜならば、何があるかが良く分からないからです。漠然としているのですが、逆に情報も漠然としていて、結局、判断も漠然としてしまうと言いますか、学校の話もそうですし、仕事の情報についてもそうで、例えば山形の仕事情報が一番多いのがハローワークなのですが、東京や関東ですとハローワークではなくて、webを活用することが多いわけです。ところがweb上には山形の仕事はほとんど載っていなく、このようなところにマイナスな印象を抱くところが正直なところありますし、そのような視点でいろいろと見ていくと、Iターン先としての山形は選択肢としては入ってこなく、それであれば、私であればIT系の人間なので、福岡だったり、名古屋だったり、意外なところで市や県と民間が日本のシリコンバレーをつくろうと積極的に活動している島根だったり、そういうところの方が面白そうだなと感じてしまいます。ですので、Iターン者に対してどうアピールするのがよいのかということについて掘り下げていくと、意外と良い視点が出てくるのではないでしょうか。」

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■馬場氏

「抽象的で、ぼんやりとした情報ではなくて、具体的で、魅力的で、エッジのある、解像度の高い情報を伝えていくべきということですね。大垣さんはまさにIターンをされているわけですが、例えばこんな情報があったらいいのにというような、良いところも悪いところも含めて、生の声を聞かせていただけますでしょうか。」

■大垣氏

「今、ぱっと思いつくのが2つあります。1つは、webの情報は良いところばかりが書いてありますが、実は気になるのは悪いところで、最初から交通の便が悪いと書かれていれば、それを理解して移住をしてくるわけで、自分としてもそこは気にならないところです。一方で、それまでは悪い情報をまったく見ていなかった場合、移住をしてきて初めて悪いところに出会ったときに、このまちは住みづらいと感じてしまうのかも知れません。

2つ目は、自分の住んでいる南陽市で見たときに、例えば、以前暮らしていた地域では閉鎖的とは言いませんが、他人の家のことについてすぐに噂話が始まったりしてしまうところがありましたが、現在暮らしているところでは、もちろん挨拶程度の関係はありますが、そこまでプライベートに入り込んできません。狭い地域の中でも、ここはこういうところというように、細かい情報があるとありがたいのかなと感じます。」

■馬場氏

「必ずしもいい情報ばかりではなくて、ここが問題ということが載っているということも大切だったりするという考え方は面白いですね。吉里さんはいかがですか?」

■吉里氏

「いまの話に通じることとして、自分たちがR不動産をやるにあたって、良い情報も、悪い情報も書いています。ちまたの不動産屋さんはいい情報しか書かないところがほとんどです。そうすると人は集まりますが、物件は決まらない。案内をして決まらないと自分たちとしてもロスが生まれますので、僕たちはそういうことは一切やらないようにしていて、両面をかなり明確に書きます。リアルローカルもあえてその観点から考えてみるのは良いのかも知れません。」

■馬場氏

「改めて考えてみると、渡辺さんから発せられる地域の情報だとか、大垣さんから発せられる地域の情報だとか、「この人から発せられる情報」という視点で、かつ、解像度の高い主観に満ちた情報のほうが面白いのかも知れないですね。例えば、神戸でやっている「トライアルステイ」という試しにそのまちに住んでみるという手法については、どのようなかたちで進んでいくのでしょうか?」

■小泉氏

「宿泊先については、例えば、知人の家に泊まってもらったりしています。泊まってくれた方は親近感が沸いて、かなりの割合で徐々に何度か神戸に通い出すというような動きが始まります。先ほどのプレゼンテーションの中でも話しましたが、どうやって地元の人に出会うのか、その出会い方を設計するというのが非常に大事だと感じます」

■吉里氏

「最近、神奈川県の三浦市で「トライアルステイ」を実施しました。やりながらだんだんと自分たちも学ぶところがあって、いわゆる観光ツアーではなくて、ローカルの方のガイドで2~3時間まちを回ったあとに懇親会を行い、そこに地域の面白い方々に声を掛けて呼んでおく。というようなことをこちらからあえて仕組んでおくと、「トライアルステイ」参加者同士がすごく仲良くなって、いつの間にかフェイスブックで自然に70~80人のグループができていたりして、今では頻繁にバーベキューなどの企画行われています。また、その中の一人がコワーキングスペースをつくろうとした際に、普通に流通していない物件がその仲間の関係から借りられるというようなことが起きています。ですので、リアルに顔を合わせられる場をどうつくるかはとても重要だと感じます。」

■馬場氏

「出会いかたをデザインして、出会う機会を発信しなければならないということですね。」

■吉里氏

「リアルローカルの「リアル」にはそのような意味も込めていて、神戸は神戸で活動をする一方で、東京でも「神戸ナイト」というイベントを実施して、神戸に興味のある東京の人を集めて、そこで小泉さんが参加して具体的な接点をつくる。そうすると、動きがいろいろと出てきますね。」

■小泉氏

「それがきっかけで、その後、私のオフィスを訪れてくれたり、実際に移住してきてくれた方もいたり、やはり一度会っているので尋ねやすくなるため、、Facebookやメールで問い合わせが多々あります。」

■馬場氏

「「山形ナイト」もやってみたいですね。芋煮の時期に(笑)。」

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■馬場氏

「大垣さんはカフェというリアルな場をつくっているわけですが、出会いの場があることでいろいろなことが起きるのでしょうか?」

■大垣氏

「もともとカフェをつくった理由は、その地区にカフェが無く、地元の人が集まれる場所がなかったからです。そして、やはりつくったからには、何かやろうと地元の酒蔵さんと一緒に日本酒のイベントを実施してみると、地元の若い方もきてくれるようになったり、他にも面白かったのは、観光で外から来た方と地元の方が相席になった際に、そこで話が始まり、接点が生まれたというのはありますね。」

■馬場氏

「大垣さんは25歳とまだ若いですが、今後、山形という地でどのように過ごしていこうか、そして、そのためにこういうものがあって欲しいなどあれば教えてもらえますか」

■大垣氏

「個人的に目指しているのは、熊野神社の参道にまったくお店がなくて、来られる方があまり楽しくないため、少しずつでもそこにお店を出していきたいなと考えたりしています。それと、自分の理想的な生活スタイルとしては、移住してきたとはいえ、あくまでよそ者でいたいという気持ちがあります。やはり、東京でしか得られない情報や、海外でしか得られない情報もあるわけで、そういうものを提供し続けられる人でありたいなと感じています。例えば週のうちの5日は山形にいて、2日は他の地域にいるようなスタイルでありたいなと思っています。」

■馬場氏

「その地にどっぷり定住というわけではなくて、もう少し軽やかに移動できることが担保されている生活をイメージされているわけですね。渡辺さんも先ほどそのようなことを仰っていましたが、いかがでしょうか。」

■渡辺氏

「以前、荘内で起業を考え実現を目指す2泊3日のスタートアップイベントに参加させていただいたのですが、このようなイベントを山形市内でもどんどんやっていきたいと主っています。実際、起業をするというのは少々敷居が高いわけですが、そのようなイベントに何度か参加することでチャレンジする精神を広げていきたいです。荘内では、スタートアップや移住や教育のことも考えた「西海岸プロジェクト」というのがあって、先ほど話に出ていた「トライアルステイ」のために空き家をリノベーションして格安で利用できる「荘内ベース」というものも用意されていたりします。そのような、気軽にいろいろ試すことのできる試みが山形市にもできてくるともっと変わっていくのかなと思います」

■馬場氏

「渡辺さんの望むライフスタイルとしては、山形と東京を適度な距離感で過ごしたいというイメージなのでしょうか?」

■渡辺氏

「そうですね。山形に固執しているわけでもないですし、東京が嫌いというわけでもありません。私の会社ではシンガポールの会社と一緒に仕事をしたり、ベトナムの会社と一緒に仕事をしたりしていますので、もう少し視点を大きくして、外のつながりの中で得たものを、山形に持ち帰れる状態でありたいなと思います」

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■馬場氏

「時間もなくなってまいりましたが、佐藤市長は一連のやり取りの中で、どのような感想を抱かれましたでしょうか。」

■佐藤市長

「まさに本日出てきたような意見がもっと活発に行われる場があることがまちの魅力ですし、多様性を許容するまちであるほどイノベーションが起こりやすいという研究もあり、私もそう思いますので、何か動いている状態を行政として常にサポートしていきたいなと思っています。それと、「移住」を本気で考えたときに、お子さんがいる家庭は、子どものことをまず先に考えますので、山形のなかでも国際的に通用する人材が育つように、子育てや教育面に力を入れていきたいと感じました。」

■馬場氏

「最後に、みなさんから一言ずつお願いいたします」

■大垣氏

「南陽市地域おこし協力隊として、なかなか移住というところまで考えられていなかったなと感じ、本日の話がたいへん参考になりました。今後の取り組みのなかで移住ということについても意識していきたいと思います。」

■吉里氏

「すぐに実践できそうなアイデアが幾つか出たと感じています。あとは人です。どなたか手伝ってくれる方と一緒に、新しいかたちのローカルメディアをつくっていけたらと思います。」

■小泉氏

「昨日、蔵王に泊まらせていただいたのですが、蔵王の可能性はすごいのではないかと思います。先ほど、外国人の話もありましたが、特に外国からもっと人がくるようなコンテンツを充実できれば、交流人口が増やせるのではないかと感じました」

■渡辺氏

「Uターン者、Iターン者を増やしていくには、山形にいる人、一人ひとりがどんなことをやっているのかが重要だと感じています。本日いらっしゃっている皆さんは、何かをやりたいと感じていらっしゃる方が多いと思いますので、是非、半歩でも一歩でも一緒にやっていければと思いました。」

■佐藤市長

「1時間半のなかで、本当に様々な視点やアイデアが出ました。大事なことは、小さくても具体的な行動を移すことだと思いますので、噛めば噛むほど味の出るスルメのような山形の魅力を、どう外に伝えていくかについて自分も真剣に考えていきたいと思います。今後とも宜しくお願いいたします」

■馬場氏

「本日はありがとうございました。」

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